ひよっこ整形外科医の勉強日誌

脊椎脊髄指導医を目指す若手整形外科医が勉強したことや日々思ったことを徒然に書いてます。ついでに誰かの為になれば幸いです。

椎体骨折 治療について〜保存治療〜

今回は腰椎椎体骨折の治療について説明します。

椎体骨折の治療の目標は

 短期:疾痛コントロールとADL改善

 中期:椎体変形抑制と骨癒合

 長期:脆弱性骨折の連鎖の抑制,すなわち二次予防

となります。

長期治療というのはもちろん骨粗鬆症の治療となってくるため、ここでは短・中期の治療について説明します。

椎体骨折も手術をしない保存治療と手術治療がありますのでまず保存治療から説明していきましょう。

保存治療

まずは痛みを取ることから始めます。

除痛には様々な方法があり、薬物療法、安静療法、装具療法などがあります。

個別に説明していきましょう

薬物療法

NSAIDsロキソニン、セレコックス、ボルタレンロルカムなど)

一般的な痛み止めになります。ただし、これで痛みを完全に取ることは難しいです。どちらかというと座薬(ボルタレン座薬など)を定期的に使いつつ、その間をこの飲み薬で抑える感じです。

ただ、胃腸が荒れるといった副作用があるため、大量投与は避けた方が控えた方がいいです。

トラマドール/アセトアミノフェン(トラムセット)

アセトアミノフェンという大脳に作用し、痛みを感じにくくさせる痛み止めとトラマドールとい非麻薬性鎮痛剤という麻薬の次に痛みを抑える効果が強い薬の合剤です。

痛みを取るとういうことに関しては麻薬以外では最も強いんじゃないかと思います。が、副作用も多く、嘔気・眠気・便秘などがよく挙げられます。このうち嘔気があると食事が取れなくなるため、吐き気止めを必ず併用する必要があります。

以上のことを踏まえて私は痛みが強い患者に対してはトラムセット+座薬を処方することが多いです。さらに痛みが続く時は以下の薬物も開始します。

カルシトニン製剤(カルシトニン)

実はこの薬は骨粗鬆症の薬になります。カルシトニンというのは甲状腺から分泌されるホルモンであり、骨を壊す細胞である破骨細胞(人は常に自分で古い骨を壊して新しい骨を作っています。骨代謝と言います。)に作用することで骨が溶けだすのを抑えます。さらに中枢神経系に作用し、骨粗鬆症性の疼痛(椎体骨折など)を抑えることがわかっています。アメリカのガイドラインでは勧められている薬物です。

PTH製剤(フォルテオ)

こちらも骨粗鬆症の薬になります。PTH(テリパリチド)というのは副甲状腺から分泌されるホルモンになります。本来PTHは上記のカルシトニンと異なり、破骨細胞の働きを上げます。どんどん骨が壊れていきそうですが、断続的に途切れ途切れで副甲状腺ホルモンを投与し、一時的にのみ副甲状腺ホルモンの濃度を高めると、その逆に骨形成が促進されることがわかっています。簡単に言うと毎日注射すると新しい骨が出来ることで強い骨にするのが目的です。実は骨折後に使用すると骨が早くつくこともわかっています。理由は様々言われていますが、何故か椎体骨折の疼痛も抑えてくれるとの報告も多いです。

すごくいい薬ではありますが制限もあります。「骨粗鬆症以外に適応がない」「生涯で約2年間しか使えない」さらに一番のネックは「毎日自分で注射をする」ことです。とは言っても、痛みも取れるし、骨粗鬆症があるなら積極的に使用してもいいと私は考えます。

安静療法・装具療法

実は安静の是非、固定方法(ギプス、硬性装具、簡易コルセットなど)の選択やその固定期間に関する統一された見解はなく、各施設あるいは医師の裁量に任されていることが多いです。

(そのため、ここに書いていることも私個人の見解によるものと考えてください。)

これは2011年の日整会において日本整形外科学会脊椎脊髄病委員会の先生方が他施設共同研究をされた結果によるところが大きいかと思います。その内容をすごく簡単にまとめると

①3週間のベット上安静(ベットの上で動かない)後、少し固めの装具を9週間つけながら動く

②1ヶ月ギブス固定(めちゃ硬い)、1ヶ月少し固めの装具、1ヶ月既製品の装具で最初から動く

③既製品(柔らかい)の装具だけで動く。ただし、装具は3ヶ月着用。

の3つに分けて骨つくまで期間、骨がどれだけ潰れるか、さらに骨がつかない確率はどうかなどを調べています。

結果は①は骨がつくまでの期間が少し長いが、骨は潰れにくい。ただし、それでも骨はある程度つぶれてしまう。①〜③の骨がつかない確率は同じ。30%程度が骨が着いていない・・・。

(詳しく知りたい人は参考文献6を読んでみてください。)

以上のことを考えると骨がつく確率が同じなら潰れない①が一番いいんじゃないかと思いますが、高齢者が3週間もベット上安静となると筋力がかなり落ちてしまい(廃用症候群)、その後歩けるようになる・家での生活に戻るまでに長期間のリハビリを要します。

そのため、私が主に行っている治療は

⑴薬物加療で動ける範囲の痛みの人はコルセットを着用し、自宅で動きながら生活をする。

⑵薬物加療では動けない人は入院し、寝返りで痛みが出ない(2週間くらい)はベットの角度を食事の時以外は30度とし、寝返りが出来るようになればコルセットを使いながら筋力を回復するリハビリを行う。

さらにコルセットは受傷当初は以下のどちらかを使用しています。

テーラー型ブレイス

ジュエット型ブレイス

受傷して2ヶ月ほどで骨がついているかどうかを判断し、骨がついてきていれば1ヶ月間もう少し柔らかいダーメンコルセットに変更します。

ただ、4週間の経過で骨がつきそうにない症例(強直性脊椎骨増殖症の境目や既存隣接椎体骨折がある、Parkinson病やステロイド内服の既往、Split typeの骨折などなど様々あります。)では早期に手術を行います。

また上記以外にも8週間保存治療を行い、レントゲン、CTで骨がついておらず痛みが持続している場合には手術を行います。

ただし、骨がついていなくても痛みが余り無いと言われる方もおられるので「骨がついていない=手術」ではありません

以上が保存療法となります。

70%の人は保存治療で治療可能ですが、早期に手術が必要な症例もあるため1〜2週間おきに受診を勧め、レントゲンで骨のつき具合を確認してくれる病院を受診することを強く勧めます。

手術加療についてはまた記事にしますので。

ではでは!!!

 

 

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