ひよっこ整形外科医の勉強日誌

脊椎脊髄指導医を目指す若手整形外科医が勉強したことや日々思ったことを徒然に書いてます。ついでに誰かの為になれば幸いです。

五十肩(凍結肩)

今回は五十肩について説明しましょう。

こちらでも書いている通り、日本人は腰痛の次に肩痛の訴えが多いです。

実際に外来診療をしていても肩が痛いと来られる方は多いです。

その際、患者さんが良く言われる事が「私、五十肩なんですかね?」

五十肩というのは江戸時代に発行された狸諺集覧に

「凡,人五十歳ばかりの時,手腕,骨筋痛むこと有り,程すぐれば薬せずして癒ゆるものなり, 俗に之を五十腕とも五十肩ともいう」

と記載があり、昔から使われていた病名になります。

通俗的病名でもあったため、実は整形外科医の中でも解釈が曖昧です。

今回、私は整形外科の領域で原因不明の肩関節拘縮(肩関節の動きが悪くなる、動かすと痛い)の際に用いられる『frozen shoulder』という病気を五十肩として説明します。

五十肩

概念

主には40-60歳代にかけて発症することが多く、これが五十肩と言われる所以です。

有病率は2〜5%程度といわれています。(100人に2〜5人)

一般的には先行する夜間痛を特徴とし、徐々に関節可動域制限(肩が上がらないなど)が 生じるものの、およそ1-3年の経過で自然回復することが多いものになります。

原因は今の所はっきりしていませんが、後で述べる手術の際に関節包(関節を包んでいる膜)を切ることで症状が改善するため、関節包が硬くなることが原因ではないかと考えられています。

後、糖尿病の方は有病率が10〜20%と上記の有病率と比較すると高くなることがわかっています。

症状

急性期(reezing phase)

発症から10週〜36週くらいの期間

関節内に様々な理由(例えば急に肩をよく使うなど)炎症性変化が起こった状態。

初期の段階であり、夜間痛が特徴的睡眠障害を呈することが多い.

慢性期(frozen phase)

発症から4ヶ月〜12か月くらいの時期

関節包の肥厚と短縮による関節拘縮が主体の時期。

急性期と比べると痛みは軽くなっており、安静時には痛みがない事多いです。

ただし、肩関節の動きが悪くなり、無理に挙げようとすると痛みが出ます。

肩関節の動きが悪いので下の写真の右側のように肩甲骨を動かして腕を上げるのが特徴です。

回復期(thawing phase)

5か月〜26か月くらいの時期

固まっていた関節包が柔らかくなる時期で、ここまでくれば痛みはなく、正常に動かせます。

 

このように経過は長く、治るまでには早くても半年程度かかると思って頂けたらと思います。

(たまに、病院にくればすぐに治ると思われる方もおられるので・・・)

治療

基本的には保存加療(薬やリハビリ)による治療で治ります。

手術をする場合はどうしても可動域が改善せず、日常生活に支障をきたしている場合と考えてください。

保存療法

上記で述べている状態により治療方法は変わってきます。

急性期

「痛み」がメインとなるので痛みに対する治療が主となります。

薬物療法

NSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛薬)

ロキソニンボルタレン、セレコックス、ロルカムなどが挙げられます。これは局所の炎症を抑えることで痛みを取る薬のため、特に急性期には有効です。

トラマドール/アセトアミノフェン(トラムセット)

NSAIDs単独では疼痛が取れない場合はこちらを併用することがあります。また高齢者で腎機能不良の場合にはこちらのみを使用することがあります。

睡眠導入剤

ゾルピデムマイスリー)やブロチゾラムレンドルミン)、エチゾラムデパス)などをよく使用します。急性期には夜間痛がよく出るため、眠れないという訴えが多いです。眠れないと痛みが増す傾向にあるため、しっかり眠る事も除痛には大事です。

・注射療法

上記薬物療法では疼痛が取れない場合に使用します。

注射で入れる薬は「局所麻酔薬+ステロイド」が多いです。

局所麻酔薬は文字通り痛みを取る薬ですが、これは3時間程度しか効きません。ステロイドというのは炎症を取ってくれる薬です。ステロイドが効くまでは局所麻酔で痛みを取り、局所麻酔が切れる頃にはステロイドが効いているのが理想です。

ただ、ステロイドという薬は血糖値を上げたり、感染のリスクを上げたり、組織を脆くしたりと副作用も多いため、そう何度も行える治療ではありません。私は基本2回までとしています。

理学療法

この時期は無理に動かすと炎症が治まらないので、頑張って動かし過ぎるのは良くありません。

肩の動きが悪くなるのを予防する目的で下図のようなコッドマン体操程度が望ましいです。

慢性期

この時期になると痛みを取る事ではなく、肩の動きを良くする事が主な治療となります。

そのため、温熱療法(肩関節を温める)+運動療法理が主な治療となります。

急性期とは異なり、慢性期では痛みが出ても積極的に動かす事が必要となります。

しかし、自力で動かすには限界があるため、ここではやはり理学療法士さんなどの他動的な力を借りて動かす必要があります。自宅でも棒体操などで痛みがない腕の力を使い、動かす事を勧めます。

なお、運動療法で改善しない場合は手術を行う事が多いですが、施設によっては首から局所麻酔を行い、腕を麻痺させた状態で徒手的関節受動術(他動的に無理やり動かすことで関節包を破る)を行う場合もあります。

ただ、この手技は上手にやらないと骨折するリスクもあるためかなり難しいです。

手術療法

上記の保存療法を3ヶ月程度行っても全く良くならない症例に対しては手術を検討します。

手術は関節鏡で行います。

手術では関節包を切ります。特に下側の関節包が硬くなっていることが多いため、ここを切ることに重点を置いています。下の図では赤いラインの部分で切ります。

この手術をした後は麻酔下では肩の動きは改善します。しかし、麻酔が切れると手術による痛みが強く出ます。痛みで力が入ってしまうことでやはり動きは完全にはよくなりません。

そのため、手術後もやはり特に理学療法士による運動療法が重要となります。

手術とは「慢性期になって回復期に向かわないものを急性期の状態に戻す」ようなものと考えてもらうのが良いと思います。

なのでやはり手術が必要となる前にしっかり慢性期の段階で頑張って動かすことが重要と考えます。

 

以上、今回は五十肩について説明しました。

手術の合併症などまだまだ説明が足りない部分はあると思いますが、それは今後付け足せていけたらと思います。

ではでは!!

 

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